障害年金制度について
Q 障害年金とは?
A 病気やケガで日常生活に支障がある「現役世代」のための国の年金制度です。
原則20歳から65歳で一定の条件を満たす方は、受給する権利があります。
Q 障害年金でもらえる金額は?
A 令和5年度の障害基礎年金の金額は、1級で年額993,750円、2級で年額795,000円です。
障害厚生年金1級と2級は、報酬比例分がプラスされるため、支給額が多くなります。障害厚生年金には3級があります。
等級 | 障害基礎年金 (国民年金) | 障害厚生年金 (厚生年金) |
---|---|---|
1級 | 993,750円 | 993,750円+報酬比例分 |
2級 | 795,000円 | 795,000円+報酬比例分 |
3級 | なし | 594,500円または596,300円 (最低保障額) |
Q 障害年金をもらえない人は?
A 次の4つの条件を、すべて満たしていない方です。
- 初めて病院を受診した日(初診日)の証明がある
- 初診日に年金に加入している
- 初診日前に保険料を納めている、または免除や猶予されている
- 障害の認定日に、年金法による障害状態である
Q 障害年金を申請する手続きは?
A 基本的な申請手続きの流れは次のとおりです。
- 初診日を確認する
- 年金事務所で初診日における保険料納付要件を確認する
- 年金事務所で必要書類を受け取る
- 病院で初診日を証明する書類を取得する
- 医師の診断書を取得する
- 病歴・就労状況等申立書に記入する
- 必要書類を揃えて年金事務所に提出する
Q 精神疾患でも障害年金をもらえますか?
A 受け取ることができます。
障害年金を受け取る方の7割は、精神障害・知的障害での認定です。
障害年金業務統計によると、令和3年度に認定された障害年金630,328件のうち、74.7%(470,806件)は精神障害・知的障害による認定でした。
Q 障害年金を受け取るデメリットは?
A ありません。
普通の会社員であれば、自分から言わない限り、障害年金を受け取っていることを会社に知られることはないです。
障害年金を受けたからといって、将来の老齢年金が減らされることもありません。
Q 障害年金がもらえる条件は?
A 条件は次の3つです。
- 初診日要件:初診日に年金制度に加入し、その日を証明できる
- 保険料納付要件:一定以上滞納していないこと
- 障害要件:障害の程度が一定以上であること
Q 障害年金更新の手続きは?
A 現況届と障害状態確認届(医師の診断書)を、再認定(更新)する年の誕生月末日までに、年金事務所へ提出します。
期間を定めて(有期認定)障害年金が支給される場合、更新の時期は1〜5年以内で定められます。
Q 障害年金の受給要件とは?
A 障害年金を受け取るための条件です。次の3つの条件を、すべて満たしていなければ受給できません。
- 被保険者要件:初診日にどの年金制度に加入していたか
- 保険料の納付要件:初診日の前日において保険料の納付要件を満たしているか
- 障害の等級要件:障害の状態が障害等級に該当しているかどうか
Q 障害年金の診断書とは?
A 医師に書いてもらう診断書です。
障害年金を請求する際に必須の書類です。診断書の必要枚数は1〜2枚。
作成費用は医療機関によって異なりますが、おおよその相場は1万円程度です。
Q 障害年金をもらえる確率は?
A 請求して、支給決定となった割合は92.2%です。
障害年金業務統計によると、令和3年に新規で請求された障害年金の件数は130,285件。
そのうち、非該当となった件数は10,130件でした。
Q 障害年金は自分で申請できますか?
A できます。
日本年金機構のホームページには、障害年金と必要書類の説明が掲載されています。
また、年金事務所や街角の年金相談センターでも、申請方法について無料で相談できます。
Q 障害年金はいつまでもらえますか?
A 障害の等級に該当しているあいだは、ずっと受給できます。
ただし、障害の状態に変化があれば、障害等級が見直される仕組みになっています。
期間を定めて(有期認定)支給される場合は、1〜5年おきに診断書の提出を求められます。
Q 精神疾患でも障害年金2級をもらえますか?
A 受け取ることができます。
精神障害の2級の認定基準の目安は、「精神の障害により日常生活に著しい障害があり、サポートが必要となることがある場合」と定められています。
障害年金業務統計によると、令和3年に精神障害・知的障害で障害年金2級(国民年金と厚生年金の合計)と、新たに決定された件数は、64,527件でした。
Q 障害年金生活者支援給付金とは?
A 公的年金などの収入や所得額が、一定基準以下の年金受給者の生活を支援するための上乗せ給付です。
令和5年度の金額は次のとおりです。
- 障害等級1級:6,425円(月額)
- 障害等級2級:5,140円(月額)
障害年金を請求する際に、年金生活者支援給付金請求書を同封すればOKです。
Q 精神疾患で障害年金3級をもらえますか?
A もらえます。
ただし、3級は国民年金(障害基礎年金)にはありません。3級があるのは、厚生年金(障害厚生年金)だけです。
初診日に厚生年金に加入していることが、受給するための最低条件になります。
精神障害の3級の認定基準の目安は、「精神の障害により労働するのに著しい制限がある程度の障害」と定められています。
障害年金業務統計によると、令和3年に精神障害・知的障害で障害厚生年金3級と、新たに決定された件数は、8,808件でした。
Q 障害年金3級を受給するメリットは?
A 働きながら、障害年金を受給することができる点です。
障害にもよりますが、3級は2級よりも、働きながら受け取れる可能性が高いです。
精神障害の3級の認定基準の目安は、「精神の障害により労働するのに著しい制限がある程度の障害」となっています。
「労働するのに、著しい制限がある程度」というのがポイントです。
Q 障害年金の支給日はいつですか?
A 初回の年金が振り込まれる日の目安は、支給を決定する年金証書が送付されてからおおむね50日以内です。
2回目以降の年金の振り込みは、2カ月に1回、偶数月の原則15日に振り込まれます。
Q 障害年金に所得制限はありますか?
A 原則、所得制限はありません。障害年金は保険だからです。生活保護とは異なり、資産や収入があっても受給できます。
ただし、20歳前傷病による障害基礎年金の場合には、所得制限があります。
20歳前の傷病が原因の障害であるため、受給者本人が保険料を納めることなく、年金を受け取っているからです。
つまり保険給付ではなく、福祉的な給付であるため、所得制限があります。
Q 障害年金の対象者は?
A 次の3つの条件をすべて満たす人です。
- 初めて病院を受診した日(初診日)の証明がある
- 初診日前に保険料を納めている(免除や猶予もOK)
- 障害認定日に、年金法による障害状態である
これら3つの条件を満たせば、20歳の若者でも、所得や資産が多い人でも、原則、障害年金を受け取ることができます。
病気やケガの原因も問われません。
Q 障害年金の等級って何ですか?
A 障害の状態を、重いほうから1級、2級、3級と区分したものです。
大まかにいえば、1級と2級は日常生活が制限され、3級は日常生活を送ることはできるが、労働が制限される状態です。
各級の程度は、次のように定められています。
- 1級:身の回りのことはかろうじてできるが、それ以上のことはできないか、やってはいけない状態
- 2級:家庭内の極めて簡単な活動(軽食をつくったり、下着程度の洗濯など)はできるが、それ以上のことはできないか、やってはいけない状態
- 3級:病気やケガが治らないで、労働が著しく制限されたり、労働に制限を加えることを必要とする場合
Q 障害年金の不支給決定は早い?
A そんなことはありません。
支給される場合でも、不支給の場合でも、審査には時間がかかります。
結果が出るまでの目安は、国民年金は3カ月、厚生年金は3カ月半です。
それよりも早く結果が来ることもありますが、追加書類の提出を求められて、さらに時間がかかることもあります。
Q 障害年金をもらえない人の年齢は?
A 年齢を理由に、障害年金がもらえなくなるということはありません。障害等級に該当しているあいだは、ずっと受け取ることができます。
しかし、障害年金の請求ができるのは、原則、65歳の誕生日の前々日までです。
それまでに、障害年金の受給権を取得していなければ、原則、受け取ることはできません。
Q 障害年金をもらいながら、国民年金を払うことはできますか?
A できます。
障害年金の1級と2級の受給権者は届出をすることで、国民年金の保険料が免除となり、納付済みの保険料は還付されます。
しかし、将来の老齢基礎年金の額が減ってしまうのが心配という方は、法定免除期間の国民年金保険料を納め続けることも可能です。
その際は、市役所などへ「国民年金保険料免除期間納付申出書」を提出します。
Q 65歳になったら、障害年金はどうなりますか?
A 65歳になっても、障害等級に該当している限り、引き続き障害年金を受給できます。
ただし、65歳になって、老齢年金を受け取る権利が生じたときは、両方を受給することはできません。
どちらか一つを選択します。
この選択は、将来に向かって撤回することができます。
障害等級3級に該当しないまま3年が経過しており、かつ65歳に達したときは、障害年金の受給権自体が失権します。
Q 障害年金の更新で落ちる確率は?
A 1%未満です。
障害年金業務統計によると、令和3年度に障害年金の再認定(更新)で、支給停止になった件数は238件。全体の0.05%でした。
減額になった件数は230件で、全体に占める割合は0.05%でした。
Q うつ病で障害年金を受け取るのは難しい?
A 簡単とまでは言えませんが、うつ病は珍しい病気ではありません。
障害年金の受給者が最も多いのは精神疾患で、全体の6割近くを占めています。
精神疾患のなかには、うつ病が含まれているのです。
認定基準には、うつ病で労働に制限がある場合には、障害年金の対象となることが書かれています。
Q 障害年金を受け取った場合、確定申告は必要ですか?
A 不要です。
障害年金には、税金がかからないからです。障害年金に対する所得税や住民税は、0円になります。
Q 障害年金1級はどんな人がもらえますか?
A 1級の定義は次のとおりです。
「身体の機能の障害または長期にわたる安静を必要とする病状が、日常生活の用事を足せなくさせる程度のもの」
具体的には、入院しているなら、活動の範囲がおおむねベッド周辺に限られる人。自宅なら、活動の範囲がおおむね寝室内に限られる人と定められています。
Q 障害年金は65歳以上でも請求できますか?
A 次の3つのいずれかに当てはまる場合は請求できます。
- 初診日が65歳前で、障害認定日に障害状態であった場合
- 65歳以降で、国民年金の任意加入中に初診日がある場合
- 65歳以降で、厚生年金に加入中に初診日がある場合
Q 障害年金と 厚生年金は 一緒に もらえるんですか?
A 一緒にもらえる組み合わせが決まっています。次の3つの組み合わせです。
- 障害基礎年金と障害厚生年金
- 65歳からの障害基礎年金と老齢厚生年金
- 65歳からの障害基礎年金と遺族厚生年金
Q 障害年金とは?厚生年金とは?
A 障害年金は2種類あります。
- 国民年金法に規定されている「障害基礎年金」
- 厚生年金保険法に規定されている「障害厚生年金」
初診日に国民年金に加入していた場合は、障害基礎年金が支給されます。
初診日に厚生年金に加入していた場合は、障害厚生年金に加えて、障害基礎年金が支給される場合があります。
Q 障害年金と生活保護の違いは?
A 障害年金は「保険」です。生活保護は「無拠出」で受けられる保障です。
障害年金は原則的に、保険料が払い、ケガや病気などの事故が起こったときに給付を受けることができます。
保険は基本的に、保険料を払っていなければ、給付を受けられません。
生活保護は、国が最低限の生活を保障する制度です。保険料という概念はありません。
Q 障害年金と生活保護は同時にもらえますか?
A 同時にもらうことができます。
しかし、両方を全額受け取ることはできません。障害年金が優先されます。
- 最低生活費 > 障害年金額・・・障害年金が全額 + 生活保護は一部
- 最低生活費 < 障害年金額・・・障害年金のみ支給
厚生労働省が定める「最低生活費」のほうが多い場合は、まず障害年金が支給され、次に最低生活費と障害年金の差額が、生活保護費として支給されます。
障害年金のほうが、最低生活費よりも多い場合は、生活保護は支給されません。
Q 障害年金の遡及請求とは?
A 障害認定日時点までさかのぼって、障害年金を請求することです。
障害年金の時効は5年ですので、直近5年分の支給分を請求し、一時金として受け取ることができます。
Q 障害年金の遡及請求は難しいですか?
A 診断書が2枚必要になるため、受給するハードルが上がります。
遡及請求の手続きでは、原則として、次の2枚の診断書が必要です。
- 障害認定日から3カ月以内の症状で作成された診断書(①)
- 請求時の3カ月以内に作成された診断書(②)
①の診断書を書いてもらうためには、障害認定日から3カ月以内に、医療機関を受診していなければなりません。
また、受診していたとしても、カルテが廃棄されていたり、廃院になっていたりすることがあります。
障害認定日から年月が経てば経つほど、遡及請求をするための資料を集めるのが難しくなります。
Q 障害年金はどこに相談したらいいですか?
A 以下の機関で無料相談ができます。
- 年金事務所
- 街角の年金相談センター
- 市役所や区役所など
「年金事務所」は、日本年金機構が運営している年金専門の公的機関です。
「街角の年金相談センター」は、日本年金機構の委託を受けて、全国社会保険労務士会連合会が運営している相談窓口です。
「市役所」などの町役場は、国民年金に関する相談ができます。
社労士のなかにも障害年金を専門とし、無料で相談に乗ってくれる事務所があります。
「障害年金+社労士+お住まいの地域名」でインターネット検索をしてみてください。
あなたに親身になって、相談に応じてくれる社労士が見つかるはずです。
Q 障害年金をもらうための条件は?
A 次の4つの条件をすべて満たす必要があります。
- 初診日の証明がある
- 初診日に公的年金に加入している
- 初診日前に保険料の未納がない、または一定以上納付している
- 障害認定日に、年金法による障害状態である
「初診日」とは、障害の原因となった病気やケガで初めて医師の診療を受けた日です。
「公的年金」とは、国民年金、厚生年金保険、共済年金を指します。
「障害認定日」とは原則、初診日から1年6カ月を経過した日です。
「年金法による障害状態」は、国民年金・厚生年金保険 障害認定基準に定められています。
Q 障害年金はいくらもらえますか?
A 最低でも、年間596,300円(令和5年度)を受け取ることができます。
以下は、令和5年度の障害年金の年間支給額です。
等級 | 障害基礎年金 (国民年金) | 障害厚生年金 (厚生年金) |
---|---|---|
1級 | 993,750円 | 993,750円+報酬比例分 |
2級 | 795,000円 | 795,000円+報酬比例分 |
3級 | なし | 594,500円または596,300円 (最低保障額) |
A 国民年金は、2級で795,000円または1級なら993,750円。
厚生年金は、3級(594,500円または596,300円)もあり、さらに、1級と2級は報酬比例分も支給されるため、国民年金よりも高額になります。
「報酬比例」分とは、給与やボーナスの金額に比例して決まる部分です。
厚生年金は報酬が多いほど、保険料が高くなります。
払った保険料が多くなるほど、受け取れる年金額も高くなります。
Q 障害年金とは?わかりやすく言うと?
A 障害年金は公的年金制度のひとつです。
基本的には、保険料を払い、病気やケガなどの事故が起きたときに保険給付を受け取るという流れです。
国が運営する「障害保険」と言い換えることもできます。
条件を満たせば、若い人でも請求する権利があります。
Q 精神の障害年金の更新は何年ごとですか?
A 障害の種類や状態によって変わりますが、「有期認定」の場合は1年〜5年ごとの更新です。
支給決定を通知する年金証書に、次回の診断書提出日が書かれています。
「永久認定」の場合は、更新はありません。
更新年の誕生月の3カ月前の月末に、日本年金機構から「障害状態確認届(診断書)」が発送されます。
主治医に診断書を作成してもらい、誕生月の末日までに、年金事務所等に提出してください。
Q 障害年金の打ち切り対象者とは?
A 「打ち切り=更新時の支給停止」と捉えると、対象者は次の3パターンです。
- 障害等級が軽くなった人
- 20歳前障害基礎年金受給者で一定以上の所得がある人
- 障害状態確認届( 診断書)を期限内に提出しなかった人
たちえ支給停止になっても、受給権が無くなるわけではありません。
障害年金の受給権が失権するのは、一番早くても65歳です。
失権するまでは、何度でも支給停止の解除を求めることができます。
Q 国民年金の障害年金は?
A 国民年金の障害年金は「障害基礎年金」といいます。障害等級は1級と2級のみです。
厚生年金の障害年金は「障害厚生年金」という名称です。1級と2級、そして3級まであります。
1級が障害の程度が一番重い状態です。
3級まで規定されている障害厚生年金のほうが、受給しやすいと言えます。
Q 障害年金の年金証書とは?
A 障害年金の支給が決定したときに、日本年金機構から届く厚手のカラー用紙です。
年金証書には、年金の種類や年金額、受給権を取得した日、障害等級、診断書の種類、次回更新の時期などの情報が記載されています。
遡及請求が認められたかどうかも、年金証書を見ればわかります。
Q 障害年金2級とは?
A 2級と認定される目安は、「必ずしも他人の助けを借りる必要はないが、日常生活は極めて困難で、労働により収入を得ることができない」ほどの障害です。
家庭内や病院内の生活でいえば、活動の範囲がおおむね家屋内や病棟内に限られるような方が2級に相当します。
国民年金と厚生年金、それぞれに2級が規定されています。
等級 | 障害基礎年金 (国民年金) | 障害厚生年金 (厚生年金) |
---|---|---|
2級 | 795,000円 | 795,000円+報酬比例分 |
報酬比例分の加算がある分、障害厚生年金のほうが、受け取れる金額が大きいです。
Q 発達障害で障害年金をもらえない人は?
A 発達障害そのものの症状だけで、どれだけ日常生活に制限を受けているかが、日本年金機構の認定医に伝わっていない場合は不支給になる可能性があります。
提出する診断書や申立書に、日常生活に支障が出ていることをきっちりと記載しなければなりません。
また、就労の状況次第では、認められないケースもあります。具体的には次のとおりです。
- 自分である程度臨機応変な業務ができる人
- 保護的な環境でなくても業務を遂行できる人
- ストレスなどの影響が日常生活の質の著しい低下につながっていない人
- 管理・指導・配慮の必要がない人
- 一般企業に一般雇用で就労し、安定した業務を支障なく行えている人
- 同僚と問題なく意思疎通ができている人
Q 障害年金と老齢年金はどちらがお得ですか?
A 基本的には、障害年金のほうがお得です。
なぜなら、老齢年金は所得税や住民税が課税対象なのに対し、障害年金は非課税だからです。
また、障害基礎年金2級は老齢基礎年金の満額、障害基礎年金1級は老齢基礎年金満額の1.25倍の年金額になります。
老齢基礎年金と障害基礎年金の選択なら、障害基礎年金を選びましょう。
Q 障害年金の初診日とは?
A 障害の原因となった傷病について、初めて医師または歯科医師の診療を受けた日です。
医師または歯科医師でない整骨院は、初診日と認められません。
障害年金を受け取るためには、初診日を証明する必要があります。
原則的には、医療機関が発行した初診日を証明する書類(受診状況等証明書)を申請時に提出しなければなりません。
Q 発達障害で障害年金に落ちたらどうすればいいですか?
A まず、審査の過程でどのような判断があったのかを確認するために、保有個人情報開示請求をして、障害状態認定表または障害状態認定調書を入手します。
そして、決定が覆る可能性があると判断したら、行政不服審査法に基づき、不服申立(審査請求・再審査請求)をします。
審査請求で却下・棄却されたとしても、再審査請求をすることが可能です。
また、不服申立をせずに、裁定請求のやり直し(再裁定請求)をすることもできます。
再裁定請求のメリットは、診断書などの提出書類を最初から出し直すことができることです。
再裁定請求を選んだほうが、障害年金を受給できる可能性が高まったり、支給決定までの期間が短かったりする場合があります。
不服申立と再審査請求の手続きを同時に進めることも検討しましょう。
Q 障害年金を申請するための条件は?
A 次の3つの条件をすべてクリアする必要があります。
- 初診日に年金制度に加入していて、その日を証明できる
- 保険料を一定以上滞納していないこと
- 障害の程度が一定以上であること
ただし、20歳前に初診日がある傷病が原因の障害の場合は、保険料を滞納していたとしても障害年金を受け取れるケースがあります。
Q 障害年金を申請して結果待ちの期間は?
A 3〜4カ月です。
日本年金機構から結果が郵送で通知されます。
日本年金機構も、申請受付から決定までおおむね3カ月以内になるように努めていますが、書類に不備があったり、追加書類を求められたりすると、決定までにさらに時間がかかります。
受付日から3カ月以内に決定しない場合は「審査遅延」の通知が届きます。
Q 障害年金が通りやすい都道府県はありますか?
A 現在はありません。
以前は確かに、各都道府県の事務センターで障害基礎年金の審査が行われていたため、通りやすい都道府県が存在しました。
しかし現在は、地域間の格差を是正するために障害基礎年金も障害厚生年金も、東京都の日本年金機構「障害年金センター」で一括審査されています。
以前のような通りやすい・通りにくい都道府県という概念はなくなりました。
Q 発達障害で障害年金はもらえますか?
A 受け取ることができます。
令和3年度に障害年金の支給が認められた件数(新規と更新の合計)の74.4%が、精神障害・知的障害でした。
精神障害には、うつ病、双極性感情障害(躁うつ病)、精神遅滞等の知的障害、ADHD・自閉症スペクトラム・アスペルガー症候群・広汎性発達障害等の発達障害、てんかん、高次脳機能障害、統合失調症などが含まれます。
Q 障害年金の更新は審査が厳しいですか?
A 更新時の審査が、特別厳しいということはありません。
しかし、更新時に提出する診断書の内容によっては、支給停止になる可能性があります。
日常生活状態が改善されていたり、労働が支障なくできていたりすることが診断書から読み取れる場合は、支給停止になる可能性が高まります。
特に、精神疾患や内部疾患(がん・難病など)の場合は要注意です。
外部疾患のように、数値や機能により等級を明確化できないからです。
精神疾患や内部疾患の場合、次の更新までに「安定した就労」ができているかが、ポイントになります。
職につけるくらいに症状が回復したと主治医が判断し、実際にフルタイム就労を開始して、かつ、症状が安定しているなら、支給停止になる可能性があります。
そのため、普段から主治医に就労の詳しい実態や就労時の支障や休職のことを随時伝えてカルテに記録してもらい、更新時の診断書に記載してもらうようにしましょう。
Q 障害年金の申請に必要は書類は?
A 必ず提出する書類は次の6つです↓
- 年金請求書
- 診断書
- 受診状況等証明書(受診状況等証明書が添付できない申立書でも可)
- 病歴・就労状況等申立書
- 住民票(年金請求書にマイナンバーを記載すれば省略可)
- 金融機関の通帳コピー
加算対象者の家族がいる場合は、次の書類も必要になります↓
- 戸籍謄本
- 配偶者の課税証明
- 子の収入が確認できるもの(学生証など)
- 子についての診断書(20歳未満で障害がある場合)
必要に応じて提出する書類は次の3つです↓
- 本人の所得証明書(20歳前傷病の場合のみ)
- 障害者手帳のコピー(手帳を取得している人のみ)
- 年金証書(年金を受給している人のみ)
Q 障害年金3級とは?
A 3級は厚生年金保険にだけ、規定されている障害等級です。
国民年金は1級と2級のみです。3級は存在しません。
等級 | 国民年金 障害基礎年金 | 厚生年金保険 障害厚生年金 |
---|---|---|
1級 | 〇 | 〇 |
2級 | 〇 | 〇 |
3級 | × | 〇 |
障害厚生年金3級の支給額は、報酬比例の年金額のみですが、最低保障額(令和5年度は596,300円)が設けられています。
3級に該当する方は、労働に著しい制限を受ける、または労働に著しい制限を加えることを必要とするような状態です。
日常生活にほとんど支障はないが、労働については制限がある方が3級に相当します。
Q 障害年金の無料相談はどこでできますか?
A 確実に、無料で障害年金の相談ができるのは、次の2つの機関です。
- 年金事務所
- 街角の年金相談センター
- 市役所や区役所
年金事務所は、日本年金機構が運営している年金の総合的な相談窓口です。
街角の年金相談センターは、日本年金機構の委託を受けて、社労士の連合組織である、全国社会保険労務士会連合会が運営しています。全国80ヶ所にあります。
市役所や区役所は、国民年金に関する相談ができます。
開業している社労士になかにも、障害年金を専門にしている社労士は多いです。
無料で相談に乗ってくれる社労士事務所もたくさんありますので、「障害年金+社労士+お住まいの地域名」などでインターネット検索をしてみてください。
無料相談を受け付けている社労士のホームページが見つかるはずです。
Q 障害年金と障害者手帳は一緒ですか?
A 一緒ではありません。まったく別の制度です。
「障害年金」は、ケガや病気で障害が残ったときに、国から年金という形でお金が支給される制度です。
「障害者手帳」は、手帳を取得することで、各種の公的手当や税金の控除・減免などを受けることができます。
障害者手帳を取得することで、受けられる主なサービスは以下のとおりです。
- 「特別障害者手当」などの福祉手当
- 障害者扶養共済への加入
- 医療費の助成
- 日常生活用具・補装具の交付
- 住宅面での優遇
- 運賃・通行料の割引
- NHKの受信料の減免や携帯電話の割引
- 博物館や映画館の入館料の割引
障害者手帳は、市役所や区役所で申請できます。
障害年金の申請窓口は、日本年金機構になります。
障害年金と障害者手帳の両方を取得することも可能です。
Q 障害年金は何歳からもらえますか?
A 20歳からです。
正確には、20歳になった日の属する月の翌月から、障害基礎年金が支給されます。
これは、「20歳前の傷病による障害に基づく障害基礎年金」と呼ばれるものです。
20歳前にケガや病気の初診日があり、かつ障害認定日に障害等級1級または2級に該当する障害の状態にあるときは、20歳から障害基礎年金を受け取ることができます。
Q 障害年金は非課税ですか?
A はい、非課税です。
障害年金に対する所得税はや住民税はかかりません。課税対象ではないため、ゼロ円です。
遺族年金も同じように非課税です。
障害年金 | 老齢年金 | 遺族年金 | |
---|---|---|---|
所得税 | 非課税 | 課税 | 非課税 |
住民税 | 非課税 | 課税 | 非課税 |
ただし、医療保険料や介護保険料は納付しなければなりません。保険料は前年の所得に応じて決まります。
Q 障害年金をもらうことは、ずるいことですか?
A ずるいことでは、全くありません。むしろ権利です。
国民年金と厚生年金保険は、一部の給付(20歳前の傷病による障害に基づく障害基礎年金)を除き、保険の仕組みで成り立っています。
保険とは、元気なときに保険料を払っておき、事故が起きたときに、給付を受け取るシステムです。
つまり、民間のガン保険と同じで、保険料を払っておいて、ガンになったら保険金を受け取ることと同じです。
また、不正が行われないように、医師によるダブルチェックも行われています。
1回目は主治医が診断書を作成する際。2回目はその診断書を、日本年金機構の認定医師がチェックする際です。
不正受給が起きないように、3〜4ヶ月の期間をかけて慎重に審査が行われています。
保険料と障害の要件を満たしていれば、障害年金を受け取ることはズルイことではありません。当然の権利です。
Q 障害年金は80歳以上でも受け取ることができますか?
A 受け取ることができます。
しかし、ハードルが高いです。
65歳以降でも新規で障害年金を請求できるケースは、次の3つのいずれかに当てはまり、それを証明できる人です。
- ケース①:初診日が65歳前で、障害認定日に障害の状態にあった人
- ケース②:65歳以降で、国民年金の任意加入中に初診日があり、障害認定日に障害の状態にあった人
- ケース③:65歳以降で、厚生年金に加入中に初診日がある場合で、障害認定日に障害の状態にあった人
Q 障害年金の初診日は、どうすれば調べられる?
A 記憶をさかのぼり、記録を探してみることです。
「おおよそ5年前に受診したはず」という記憶があるなら、お薬手帳や領収書、診察券、健康保険の給付記録などの「記録」を探してみましょう。
「記憶」を探るには、次の6つを順番に確認していくことが重要です。
- 現在の傷病
- 最初に体調を崩した時期
- 当時の症状はどうだったか
- すぐに病院に行ったか、行かなかったか
- いつ、どの病院へ最初に行ったか
- 病院で受けた指示や診断
初めて受診したと思われる病院の見当がついたら連絡をして、カルテ(診療録)が残っているかを確認します。
カルテが残っていたら、初診日を証明する書類「受診状況等証明書」の作成を依頼しましょう。
Q 障害年金は、働きながらでも受給できますか?
A 受け取ることができます。
実際に受給者の3割は、障害年金をもらいながら働いています。
しかし、障害等級や障害の種類によって、受給しやすい、しにくいの差はあります。
厚生年金にのみ規定されている障害厚生年金3級は、働きながらでも受給できるケースが多いです。
なぜなら、3級の障害の目安は「仕事が全くできないわけではないが、制限がある」状態だからです。
それに対し、障害等級2級の目安は「日常生活に著しい障害を受けている」状態。働いてはならないとは明示されていませんが、日常生活にまで踏み込んでいます。
外部障害(肢体麻痺や視覚、聴覚障害など)や一部の内部障害(人工透析や人工弁の置換など)の場合は、就労の有無が障害年金の受給に影響することはありません。機能や数値で判断しやすいからです。
それに対し、精神障害や悪性新生物(ガンなど)は、就労していることが受給に影響を及ぼしやすいです。「仕事をしているなら、日常生活能力は向上している」と判断される可能性があります。
働きながら、障害年金の請求をする場合は、就労と日常生活の関係性をきちんと押さえながら進めることが重要です。
Q 発達障害で障害年金を受給するのは難しいですか?
A 一概に難しいとはいえませんが、簡単ではありません。
発達障害は、内科的な疾患です。ケガなどの外部疾患とは違い、障害の状態を数値や機能により数値化することが難しいです。
障害の数値かが難しい分、発達障害は日常生活や労働への制限について総合的に判定します。
その判定の際に、もっとも重視されるのが主治医が作成した診断書です。
実際に日常生活や就労の現場で、さまざまな支障が生じていたとしても、主治医に具体的に伝えていなければ、診断書には反映されません。
本人が支障に気がついていない場合もありますので、日常生活をよく知る家族がしっかりと日常の様子を伝えることも方法のひとつです。
Q 精神疾患で障害年金3級を受給する際の金額はいくらですか?
A 報酬比例の年金額です。
報酬比例とは、もらっていた報酬(給与やボーナス)と厚生年金の加入期間によって計算されます。
障害厚生年金3級には最低保証額が定められています。令和5年度は、年間で596,300円です。
等級 | 障害基礎年金 (国民年金) | 障害厚生年金 (厚生年金) |
---|---|---|
3級 | なし | 594,500円または596,300円 (最低保障額) |
障害年金3級は国民年金にはありません。厚生年金にのみ、規定されています。
Q 精神疾患で障害年金2級を受給する際の金額はいくらですか?
A 国民年金と厚生年金かによって、金額は異なります。
国民年金の障害基礎年金2級は、年間で795,000円。
厚生年金の障害厚生年金2級は795,000円に、さらに報酬比例分がプラスされます。
等級 | 障害基礎年金 (国民年金) | 障害厚生年金 (厚生年金) |
---|---|---|
2級 | 795,000円 | 795,000円+報酬比例分 |
報酬比例とは、もらっていた報酬(給与やボーナス)と厚生年金の加入期間をもとに支給される年金です。個人ごとに金額は異なります。
Q 障害年金をもらうと老齢年金はどうなりますか?
A 障害年金をもらったからといって、老齢年金を受け取れないということはありません。
ただし、65歳までに、障害年金と老齢年金の受給権を取得した場合、両方は受給できません。老齢年金と障害年金、どちらかを選択します。
65歳以降の障害年金の場合は、老齢年金と併給できる組み合わせがあります。次のとおりです。
- 老齢厚生年金(厚生年金) + 障害基礎年金(国民年金)
Q 障害年金の手続きの流れは?
A 次の8ステップです。
- 初診日を確認する
- 年金事務所または役所の年金課にて、初診日における保険料納付要件を確認する
- 年金事務所または役所の年金課にて、申請に必要な書類一式を受け取る
- 初診の病院で、受診状況等証明書を取得する
- 現在の病院と障害認定日の病院で、診断書を取得する(場合によっては、現在の病院は不要)
- 病歴・就労状況等申立書を作成する
- 年金事務所または役所の年金課にて、申請書類一式を提出する
- 審査の結果が郵送で届く
Q 障害年金の手続きは、どこでできますか?
A 年金事務所または役所の年金課です。
市役所や区役所などの年金課は、国民年金のみの請求手続きと相談ができます。
年金事務所は、国民年金と厚生年金両方の請求と相談ができます。
全国社会保険労務士会連合会が運営する「街角の年金相談センター」では、障害年金の請求手続きはできません。無料相談がメインの業務です。
Q 障害年金は所得になるのですか?
A 所得になりません。
障害年金には、所得税はかかりません。よって、確定申告をする必要はないです。
障害年金は非課税ですので、会社の年末調整にも影響しません。
Q 障害年金の振込日はいつですか?
A 初回の振り込み日は、支給決定後50日以内です。
2回目以降の振込日は、偶数月の15日(15日が土日祝の場合は直前の営業日)に直前の2カ月分が支給されます。
6月と7月の2カ月分の障害年金が、8月15日に振り込まれるイメージです。
Q 障害年金に収入制限はありますか?
A 一部の例外を除き、所得(収入)制限はありません。
原則的に、どれだけ高収入でも、資産があったとしても、障害年金を受け取ることができます。
一部の例外とは、20歳前の傷病が原因で障害年金を受け取る場合です。
例えば、15歳のときに発達障害が疑われ病院へ行き、20歳の誕生日の前日に、その発達障害で障害等級1級または2級に該当すると認められたケースなどです。
この場合は、国民年金の保険料を納付していなくても、20歳から障害年金を受け取ることができます。
しかし、保険料を納付せずに、障害年金を受け取ることになります。保険ではなく、福祉的な給付です。
そのため、20歳前の傷病が原因で障害年金を受け取る方のみ、所得制限が設けられています。
Q 障害年金を受け取った場合、年収いくらまで働けるのですか?
A いくらまで働けるという概念はありません。
障害年金には原則、収入や所得の制限はないからです。
年収が1,000万円を超える方であっても、要件に該当すれば受給することができます。
日本の年金制度は、保険という仕組みを使っています。
保険とは、保険料を払って、事故が生じたときに給付を受け取る。自動車保険と同じです。
例外的な給付(20歳前の傷病にもとづく障害年金)を除き、いくら稼いでいたとしても、年収に関係なく、年金を受け取ることができます。
Q 障害年金の診断書を書くのを嫌がる医者に対して、どう対応すべきですか?
A 日常生活の様子を細かく伝えましょう。
1回5〜10分程度の診察だけでは、状態が十分に伝わっておらず、障害年金を受け取れるほど病状が重くないと思われている可能性があります。
傷病による仕事や日常生活への影響を具体的に説明してみてください。
日本年金機構のホームページの「障害認定基準」から、自身の傷病や障害に対する箇所を印刷して、医師に渡すことも理解してもらうという点では有効です。
なかには、「トラブルに巻き込まれたくない」「回復の妨げになる」「忙しい」などの理由で、診断書を書いてくれない医師がいるのも事実です。
医師の協力を得るためには、障害年金を受給することで「治療に専念できる」「精神的に楽になれる」など、治療面でプラスに働くことを伝えてみましょう。
それでも診断書を書くことに難色を示す場合は、転院を検討することも選択肢の一つです。
Q 障害年金の診断書を書いてくれる病院はどこですか?
A どの病院でも、基本的には診断書を書いてくれます。
医師法 第19条2項では、診断書の交付依頼があった場合、正当な事由がない限り、医師は診断書の作成を拒むことができないと定められているからです。
拒むことができる正当な事由とは、次のとおりです。
- 診断書が詐欺、脅迫等不正目的で使用される疑いが客観的状況から濃厚であると認められる場合
- 医師の所見と異なる内容等虚偽の内容の記載が求められた場合
- 患者や第三者などに病名や症状が知られると診療上重大な支障が生ずるおそれが強い場合など、特別の理由が存在する場合
正当な事由がなければ、医師は診断書を書くことを拒めません。
医師が診断書を書いてくれないときは、その理由を聞くことが最初のステップです。
Q 障害年金が不支給になった理由を確認できますか?
A 確認できます。決定通知書に、「支給しない理由」として書かれています。
不支給になる理由は、大きく分けると次のどちらかです↓
- 初診日が確認できなかった
- 障害等級に該当しなかった
また、厚生労働省へ個人情報の開示請求をすると、審査の過程でどのような判断があったのかが書かれた文章を入手することができます。次の2種類です↓
- 国民年金の場合は「障害状態認定調書」
- 厚生年金の場合は「障害状態認定表」
不支給や却下の決定がなされた場合は、個人情報の開示まで請求するようにしましょう。
Q 精神疾患で障害年金がもらえる確率は?
A 令和3年度に精神障害・知的障害で、障害年金を新規で請求をし、認められた確率は94.3%でした。
具体的には、86,832件新たに裁定請求をし、うち81,900件が1級〜3級のいずれかの等級として認定されています。
Q 障害年金と老齢年金は併給できますか?
A 65歳までは併給できません。65歳以降は、併せて受け取れる組み合わせがあります。
以下の組み合わせの場合は、障害年金と老齢年金を同時に受給することができます。
- 障害基礎年金 + 老齢厚生年金
障害基礎年金1級または2級を受け取っている人が、65歳になって老齢厚生年金を受給できるようになった場合は併給が可能です。
Q 障害年金を受け取っている人は勝ち組ですか?
A 個人の判断によります。
ですが、なりたくて障害になってしまった人はいません。
また、障害年金を受け取れるほどの障害は、決して軽いものではありません。
以下は1級〜3級の障害状態の目安です。
- 3級:仕事に制限がある
- 2級:日常生活に著しい障害がある
- 1級:ベッドの上や寝室内で過ごすことが多い
障害年金を受け取れる状況というのは、働きたくても思うように働けない。普通に生活したいけど、それすら難しい状況を指します。
障害年金をもらっているからといって、治らない、または、いつ治るかわからない障害を抱えている方を、簡単に勝ち組などと称していいはずがありません。
Q 65歳以上で、障害年金を受け取るデメリットは?
A ありません。
デメリットではありませんが、65歳以上になると、以下のような併給(同時に受け取ること)が認められます。
- 遺族厚生年金 + 老齢基礎年金
- 老齢厚生年金 + 障害基礎年金
- 遺族厚生年金 + 障害基礎年金
65歳になって、老齢厚生年金や遺族厚生年金を受け取れるようになった場合に、上記の組み合わせのほうが受給している障害年金よりも、年金額が大きくなる可能性があります。
年金事務所等で相談するようにしましょう。
Q 障害年金の更新時の診断書とは?
A 正式名称を「障害状態確認届」といいます。更新するために必要な診断書です。
日本年金機構より、更新年の誕生日の3ヶ月前の月末に、障害状態確認届の用紙が郵送されます。
手元に届いたら、主治医に依頼して障害状態確認届に記載してもらい、誕生月の末日までに年金事務所や街角の年金相談センターへ提出する流れです。
この障害状態確認届をもとに、日本年金機構の認定医が診査を行います。結果は3〜4カ月後に送られてきます。
Q 障害年金の申請時に必要な診断書の料金はいくらですか?
A 目安としては、1万円+消費税くらいです。
診断書の作成は自由診療になります。公的医療保険の対象外となるため、各医院が自由に料金を設定しています。
5千円のところもあれば、3万円というケースもあります。
作成を依頼する前に、受付窓口で確認しておきましょう。ホームページで公開している病院も多いです。
Q 精神疾患の障害年金を請求する際の診断書の注意点は?
A 医師に、日常生活にどれくらい支障があるか、日常生活能力はどれくらいあるかを正確に伝え、診断書に反映してもらうことです。
障害年金の診査は、すべて書類だけで行われます。どんなに症状がひどくても、しっかり書類に書かれていなければ受給できません。
日常生活の支障が出ていることを訴える手段は、「診断書」「受診状況等証明書」「病歴・就労状況等申立書」の3つしかありません。
その中でも、「診断書」は等級を左右するもっとも重要な書類です。
精神疾患は検査数値で計れるものではないため、日常生活にどれだけ支障があるかを、診断書に正しく反映させることが大事になります。
Q 障害年金2級を受給するための条件は?
A 障害の状態が、「国民年金・厚生年金保険 障害認定基準」の2級に当てはまっていなければなりません。
2級の障害状態の目安は、「日常生活に著しい制限があり、必ずしも他人の助けを借りる必要がないまでも極めて困難な状態」です。
例えば、家庭内で軽食をつくるような軽い作業はできても、それ以上重い活動ができない、または行うことを制限されている方。入院や在宅で、活動の範囲が病院内・家屋内に限られるような方が2級に相当します。
2級に限らず、すべての等級に共通していますが、初診日要件を満たす必要があります。
Q 障害年金はいつからもらえるのでしょうか?
A 日本年金機構から「年金決定通知書(年金証書)」が送付されてからおおむね50日以内です。
国民年金の場合なら一番早くて、20歳になった日の属する月の翌月から、障害基礎年金を受け取ることができます。
Q インターネット上にある「障害年金相談センター」は違法でしょうか?
A 社労士事務所や社労士法人が運営している、サイトや相談所は違法ではありません。
ただし、社労士でない人が「障害年金相談センター」などと称し、報酬を得て、社会保険に関する申請書等を作成・提出することは法律違反です。やってはいけません。
「街角の年金相談センター」は、日本年金機構の委託を受けて、全国社会保険労務士会連合会が運営しているため合法です。
年金事務所も、日本年金機構が運営していますので、もちろん合法です。
Q 障害年金の相談は市役所でも、できますか?
A 市役所や区役所などの役場の年金課で、相談ができます。
しかし、国民年金(障害基礎年金)のみです。厚生年金に関する相談はできません。
厚生年金の障害年金に関する無料相談は、年金事務所か「街角の年金相談センター」で受け付けています。
また、無料で相談に乗ってくれる社労士事務所も多いです。
Q 知的障害でも、障害年金をもらえますか?
A 受け取ることができます。
知的障害とは、知的機能の障害が発達期(おおむね18歳まで)にあらわれ、日常生活に持続的な支障が生じているため、何らかの特別な援助を必要とする状態と定義されています。
ダウン症候群が代表例です。
生来型の知的障害の場合、初診日は「生年月日」となります。
そのため、ほかの障害と異なり、初診日の証明をする必要はありません。「受診状況等証明書」の提出は不要です。
初診日が生年月日になると、「20歳前の障害基礎年金」として請求できるため、保険料納付要件は問われません。
知的障害は、ほかの障害よりも障害年金を受給しやすいといえます。
Q 障害年金の請求に年齢制限はありますか?
A 年齢制限はありませんが、65歳をすぎると請求できるケースは限られます。
原則的は、65歳の誕生日の前々日までに請求しなければならないと覚えておきましょう。
例外的に、65歳以降でも障害年金を請求できるケースは以下の3つです。
- 初診日が65歳前で、障害認定日に障害状態があった人(*事後重症請求は除く)
- 65歳以降で、国民年金任意加入中に初診日がある場合
- 65歳以降で、厚生年金に加入中に初診日がある場合
*事後重症請求とは、障害認定日頃には症状が軽く、その後、症状が重くなり等級に該当するようになった場合の請求方法。
Q 障害年金は扶養家族でも受け取ることができますか?
A 会社員の妻(配偶者)などの扶養家族であっても、要件に満たせば受給することは可能です。
会社員の扶養家族で、実収入が180万円未満であれば、扶養から外れることなく、国民年金の障害基礎年金を受け取ることができます。
Q 障害年金を受け取ると、扶養家族から外れることになりますか?
A 障害年金の年間受け取り見込額と、他の収入を合わせた実収入が180万円未満であれば、扶養家族のままでいることができます。
実収入が180万円未満であれば、扶養家族から外れないため、健康保険料や年金保険料を支払う必要はありません。
Q あとから扶家族が増えた場合はどうなりますか?
A 障害年金の受給権を得たあとで、扶養する配偶者や子を有することになった場合は、受け取れる年金額が増えます。
「障害給付加算額・加給年金額加算開始事由該当届」を提出すると、障害年金に一定額がプラスされます。
加算対象になる配偶者や子の要件は以下のとおりです。
- 配偶者:65歳未満であること
- 子:18歳到達年度の末日まで、または障害等級1・2級で20歳未満であること
Q 障害年金の受給者はどんな人ですか?
A 次の3つの要件をすべてクリアし、日本年金機構へ障害年金を請求し、支給が認められた人です。
- 初診日要件:初診日に公的年金に加入していたか
- 保険料納付要件:保険料を納めていたか
- 障害要件:障害の程度は等級に該当するか
障害年金は、高齢者でなくても受け取ることができます。
20歳前の病気やケガで障害を負ってしまった場合、保険料を払っていなくても、20歳から障害年金を受け取ることが可能です。
病気やケガの原因は問われないため、さまざまな障害で生活に支障がある方が受給しています。
Q 障害年金に税金はかかりますか?
A 障害年金として受け取った収入に対して、所得税や住民税はかかりません。0円です。
障害年金1級または2級が認められると、国年年金の保険料を支払う必要がなくなります。免除申請をすることで、法定免除となります。
障害年金と他の収入を合わせた「実収入」が、年額180万円未満であれば、扶養家族から外れることはありません。健康保険の保険料を支払う必要もないです。
Q 障害年金だけでは生活できない場合、どうすればいいですか?
A 主に、次の3つの対策が効果的です。
- 障害年金以外の手当や補助を申請する
- 働く
- 生活保護を申請する
障害年金以外にも、国や自治体が提供する福祉サービスがあります。
例えば、特別障害者手当は月額で27,980円(令和5年)支給されます。
また、医療費の自己負担額が軽減される医療費の助成制度もあります。
まずは、市役所や区役所の福祉課へ問い合わせてみましょう。
少しでも働ける状態であるなら、就労も検討しましょう。
就労したからといって、障害年金がすぐに支給停止になるわけではありません。
次の更新までは確実に、障害年金を受け取ることがことができます。
更新時に就労により障害年金が停止されてしまうこともありますが、それは「*安定した就労」ができている場合です。
就労の再開については、主治医と相談しながら進めてください。
*安定した就労の目安は、同じ会社で休職、欠勤、遅刻、早退などもなく、2年くらいフルタイム勤務を続けられていること、などです。
障害年金と生活保護を同時に受け取ることも可能です。
地域ごとに定められた最低生活費と障害年金などの収入との差額が、生活保護費として支給されます。
障害年金が優先的に支給され、不足分を生活保護として受け取ることができるわけです。
生活保護の申請は、居住地の福祉事務所などが窓口になります。
Q 障害年金は75歳以上でも、新規でもらえますか?
A 新規で受け取ることはできますが、かなりハードルは高いです。
75歳以上の方が、新規で障害年金を受け取るためには、次の3つのどれかに当てはまらなければなりません。
- 初診日が65歳前で、障害認定日に障害状態であったことを証明できる
- 65歳以降に国民年金に任意加入しており、任意加入期間中に初診日があり、障害認定日に障害状態であったことを証明できる
- 65歳以降に厚生年金に加入しており、その加入期間中に初診日があり、障害認定日に障害状態であったことを証明できる
老齢年金を受給したあとに初診日があった場合は、障害年金を請求できません。
Q 障害年金の審査で落ちたら、どうすればいいです?
A 不服申立(審査請求・再審査請求)をして、決定が覆る可能性があるかを判断するために、情報を集めましょう。
まずは、保有個人情報開示請求をして、障害状態認定表または障害状態認定調書を入手します。これにより、審査の過程でどのような判断があったのかが見えてきます。
そして、結果通知書に書かれている、不支給または却下になった理由と照らし合わせて、決定が覆る可能性があると判断したら、新たな証拠を揃え、審査請求をするようにしましょう。
審査請求でも、不支給または却下となった場合は、再審査請求をすることができます。
決定を覆すことが難しいと判断した場合、審査請求をせずに、新たな書類を作成・提出して、裁定請求のやり直し(再裁定請求)をすることもできます。
審査請求をよりも再裁定請求のほうが、審査期間が短かったり、支給決定につながったりすることもあります。
どちらの方法も検討するようにしましょう。
Q 障害年金の更新は何年ごとにありますか?
A 「有期認定」の場合は、1〜5年の間で更新があります。年単位です。
期間は障害の状態によって異なり、次回更新の時期は、支給決定通知書に記載されています。
更新用の診断書の用紙は、更新年の誕生月の3カ月前の末日に、日本年金機構から発送されます。届くのを待っていればOKです。
精神疾患や糖尿病・ガンなどの内部疾患は、時間の経過とともに症状が変化する場合があるため、有期認定になることが多いです。
「永久認定」の場合は、更新はありません。病状が固定して変わらないと判断されるからです。
肢体の切断などの障害は、永久認定となります。
Q 障害年金の子の加算額はいくらですか?
A 令和5年度は、子ども2人目までは、1人につき 228,700円。子ども3人目以降は、1人につき 76,200円です。
具体例は次のとおりです。
生計を同じくしている子が5人いる場合 | 加算額(年額) |
1人目 太郎 17歳 | 228,700円 |
2人目 花子 15歳 | 228,700円 |
3人目 二郎 13歳 | 76,200円 |
4人目 幸子 10歳 | 76,200円 |
5人目 三郎 8歳 | 76,200円 |
子の加算は、障害年金1級と2級に加算されます。障害厚生年金3級には加算されません。
国民年金には、障害等級3級は存在しません。
1級 | 2級 | 3級 | |
障害基礎年金(国民年金) | 加算あり | 加算あり | - |
障害厚生年金(厚生年金) | 加算あり | 加算あり | 加算なし |
加算対象になる子は、次の基準を満たしている必要があります。(①と②はどちらか1つ)
- ①18歳到達年度の末日(3月31日)までの子
- ②20歳未満で、1級または2級の障害状態の子
- ③子の前年の年収が850万円(所得655.5万円)未満であること
Q 障害年金の申請を社労士に頼んだら費用はいくらかかりますか?
A 社労士によってさまざまです。相場として、着手金が0円〜3万円。成功報酬が年金額の2〜3カ月分、または初回年金振込額の10〜20%です。
最近は着手金が0円で、障害年金の支給が決定したときだけ報酬を受け取る、完全成功報酬制が増えています。
本当に成功報酬だけなのか、契約書を交わす際に、書面で確認するようにしましょう。
傾向として、着手金が安いところは、成功報酬が高い傾向にあります。
Q 障害年金の相談窓口はどこですか?
A 次の3つの機関で、障害年金の無料相談ができます。
- 年金事務所
- 街角の年金相談センター
- 市役所や区役所の年金課
市役所や区役所は、国民年金(障害基礎年金)の相談しかできません。
専門的な相談ができるのは、年金事務所と「街角の年金相談センター」です。
居住地に関係なく、全国どこの年金事務所や「街角の年金相談センター」で無料相談ができます。
ぜひご活用ください。
相談が予約制になっている年金事務所や「街角の年金相談センター」があります。行かれる前に確認されることをおすすめします。
Q 統合失調症だったら、障害年金は通りやすいですか?
A 通りやすいとは断言できませんが、「統合失調症、統合失調症型障害及び妄想性障害並びに気分(感情)障害」は、最も該当者が多い傷病区分です。
障害年金の請求傷病に関連するICD-10コードのF2は、「統合失調症、統合失調症型障害及び妄想性障害」と定められています。
ICD-10コードとは、世界保健機関(WHO)が作成した「国際疾病分類(ICD)第10版」という意味です。
国際的にも統合失調症は、代表的な精神疾患として規定されています。
Q 障害年金の請求に年齢制限はありますか?
A 年齢制限はありません。
しかし、65歳の誕生日の前々日までに請求しなければ、それ以降に請求できるケースは限られてしまいます。
65歳以降に障害年金を請求できるケースは次の3つです。
- 初診日が65歳前で、かつ障害認定日に障害状態にあり、それを証明できる人
- 65歳以降に国民年金に任意加入中しており、任意加入中に初診日があり、かつ障害認定日に障害状態にあることを証明できる人
- 65歳以降に厚生年金に加入中しており、その加入中に初診日があり、かつ障害認定日に障害状態にあることを証明できる人
65歳になる前に老齢年金を繰り上げて受給した場合は、障害年金を受給できなくなります。ご注意ください。
Q 働きながら、2級の障害年金をもらうことはできますか?
A 受給することができます。
次の表は厚生労働省が公表したデータで、就労しながら障害年金を受給している人の割合です。
障害基礎年金 | 障害厚生年金 | |
1級 | 22.4% | 13.5% |
2級 | 40.3% | 29.6% |
3級 | - | 58.6% |
全体 | 33.5% | 36.2% |
障害基礎年金2級の受給者の40.3%が、障害厚生年金2級の受給者の29.6%が、働いていることが分かります。
肢体麻痺や視覚、聴覚の障害などの外部障害や、人工透析や人工弁の置き換えなどの障害は、就労していても障害の状態は変わりません。そのため、就労の有無が障害年金の受給に影響することはほぼありまえん。
一方、精神疾患やガンなどは、障害を数値化しにくいため、就労していることが受給に影響を及ぼしやすいのも事実です。
2級として認めてもらうためには、「周囲や職場のは配慮があって就労できている」状況を具体的に示し、証明することが有効です。
Q 双極性障害で障害年金を受給することは難しいですか?
A 簡単とはいえませんが、受給できる可能性は十分あります。
双極性感情障害(躁うつ病)は、気分(感情)障害に含まれる精神病で、障害年金の対象です。
日常生活にどれくらい支障があるか、生活能力はどれくらいあるかが、ポイントになります。
限られた診療時間では、日々の暮らしぶりが具体的に伝わっていない可能性があります。
診断書を依頼する際は、どのような支障が出ているのかを、主治医へ文章で渡すようにしましょう。
また、うつ期の状態もしっかり診てもらった上で、診断書を作成を依頼するようにしてください。
Q 障害年金3級で、もらえる金額はいくらですか?
A 令和5年度は最低でも、年額596,300円を受け取ることができます。
等級 | 障害基礎年金 (国民年金) | 障害厚生年金 (厚生年金) |
---|---|---|
3級 | なし | 594,500円または596,300円 (最低保障額) |
障害年金3級の年金額は、報酬額に比例して、もらえる金額が決まります。
つまり、もらっていた報酬(給与やボーナス)と厚生年金の加入期間によって年金額が計算されるのです。
計算した額がどんなに少額でも、最低保障額(594,500円または596,300円)は受け取ることができます。
残念ながら、国民年金には障害等級3級はありません。
3級の年金額がもらえるのは、障害厚生年金のみです。
Q 障害年金2級で、もらえる金額は2級いくらですか?
A 令和5年度は、国民年金で年額795,000円、厚生年金なら795,000円+報酬比例分です。
等級 | 障害基礎年金 (国民年金) | 障害厚生年金 (厚生年金) |
---|---|---|
2級 | 795,000円 | 795,000円+報酬比例分 |
報酬比例分とは、もらっていた報酬(給与やボーナス)と厚生年金の加入期間で計算される年金です。
つまり、障害厚生年金2級のほうが、もらえる金額が多くなります。
Q 障害年金と老齢年金は両方もらえるのですか?
A 65歳からは、両方もらえる組み合わせがあります。それは次の組み合わせです。
- 障害基礎年金1級または2級+老齢厚生年金
障害基礎年金を受給している人が、65歳になって、老齢厚生年金の受給権を得た場合は両方もらうことができます。
ただし、65歳からという制限つきです。
また、障害厚生年金と老齢基礎年金は65歳になっても両方を受け取ることができません。ご注意ください。
Q 障害年金を受給すると、国民年金の保険料は免除されますか?
A 免除されます。
正確には、国民年金の障害基礎年金1級または2級の受給権者は法定免除となります。
法定免除とは、国民年金の保険料が全額免除となることです。
法定免除となると、受給権を取得した日の月の前月分から保険料を納付する必要がなくなります。納付済みの保険料は還付されます。
法定免除を受けるには、「国民年金被保険者関係届書(申出書)」を提出すればOKです。提出先は、市役所や区役所の年金課、または年金事務所になります。
Q 障害年金は何歳まで申請できますか?
A 原則的には、65歳の誕生日の前々日までです。
理由としては、65歳以上であれば老齢年金が受給できるようになるからです。
ただし例外的に、65歳以降でも障害年金を請求できるケースがあります。それは次の3つです。
- 初診日が65歳前で、障害認定日に障害状態にあったことを証明できる
- 65歳以降で、国民年金に任意加入中に初診日があり、障害認定日に障害状態にあったことを証明できる
- 65歳以降で、厚生年金に加入中に初診日があり、障害認定日に障害状態にあったことを証明できる
Q 障害年金の認定基準とは何ですか?
A 障害等級1級または2級、3級に該当しているか、していないかを判断するための基準です。
原則的には、初診日から起算して1年6カ月を経過した日に、障害状態にあるかどうかを障害認定基準と照らし合わせて判定します。
「国民年金・厚生年金保険 障害認定基準」は障害の部位ごとに定められています。その全文は、日本年金機構のホームページに掲載されています。
Q 障害年金の認定基準はどのようなものですか?
A 具体的には、19の障害部位ごとに、等級を認定するための基準が定められています。
第1章 障害等級認定基準 | 障害部位 |
第1節 | 眼の障害 |
第2節 | 聴覚の障害 |
第3節 | 鼻腔機能の障害 |
第4節 | 平衡機能の障害 |
第5節 | そしゃく・嚥下機能の障害 |
第6節 | 音声又は言語機能の障害 |
第7節 | 肢体の障害 |
第8節 | 精神の障害 |
第9節 | 神経系統の障害 |
第10節 | 呼吸器疾患による障害 |
第11節 | 心疾患による障害 |
第12節 | 腎疾患による障害 |
第13節 | 肝疾患による障害 |
第14節 | 血液・造血器疾患による障害 |
第15節 | 代謝疾患による障害 |
第16節 | 悪性新生物による障害 |
第17節 | 高血圧症による障害 |
第18節 | その他の疾患による障害 |
第19節 | 重複障害 |
等級認定のポイントは、障害部位ごとに異なります。
Q 障害年金に年収による支給制限はありますか?
A 原則的に、年収による制限はありません。
例外的に、20歳になる前の傷病による障害年金だけは、本人の年収による支給制限があります。
なぜなら、20歳になる前の傷病が原因であるため、保険料の納付について問われないからです。
つまり、保険料を1円も支払わずに、受け取れる年金であるため、年収の過多による支給制限があるのです。
具体的には次のように定められています。
前年の本人の所得額 | 支給内容 |
370万4,000円以下 | 全額支給 |
370万4,001円から472万1,000円 | 2分の1支給 |
472万1,000円を超える | 全額支給停止 |
扶養家族がいる場合は、1人当たり38万円が所得制限額に加算されます。
Q 障害年金による収入は年末調整の対象になりますか?
A 年末調整の対象外です。会社に申告する必要はありません。
障害年金は課税されない収入だからです。住民税や所得税はかかりません。
Q 障害年金の申請先はどこですか?
A 初診日にどの年金制度に加入していたかで異なります。具体的には次のとおりです。
初診日に加入していた年金制度 | 申請先 |
国民年金(自営業者) | 原則は市区町村役場の年金課 年金事務所、街角の年金相談センターでも可 |
厚生年金、また第3号被保険者 (会社員と会社員の妻) | 年金事務所、街角の年金相談センター |
共済組合(公務員) | 原則加入していた共済組合 |
街角の年金相談センターは、日本年金機構の委託を受け、全国社会保険労務士会連合会が運営しています。年金事務所や市区町村役場と同じく、無料で相談や書類の申請ができます。
現在、相談が予約制となっている年金事務所が多いです。電話やインターネットで予約をしてから、相談に行くようにしましょう。
Q 障害年金の配偶者加算って何ですか?
A 障害厚生年金の1級と2級だけに加算される手当です。配偶者加給年金額といいます。
障害基礎年金1級・2級と障害厚生年金3級には、加算されません。
配偶者加給年金額 | |
障害厚生年金1級 | あり(年額228,700円) |
障害厚生年金2級 | あり(年額228,700円) |
障害厚生年金3級 | なし(0円) |
障害基礎年金1級 | なし(0円) |
障害基礎年金2級 | なし(0円) |
障害手当金 | なし(0円) |
対象となるのは、障害厚生年金1級または2級の受給権がある人と、生計を同じくしている65歳未満の配偶者で、かつ配偶者自身の前年の年収が850万円(所得655.5万円)未満の方です。配偶者には、事実婚も含まれます。
Q 障害年金の更新で不支給になってしまう原因は何ですか?
A 前回、診断書を提出したときより障害の状態が軽くなったと判断された場合です。この場合に、支給停止または減額になることがあります。
特に精神疾患やガンなどの内部疾患で、更新までの期間に「安定した就労」ができている場合は、支給停止になる場合があります。安定した就労ができるほど、回復したと判断されることがあるからです。
以下の項目は、安定した就労かどうかを判断する際の材料となります。
- 同じ会社で休職、欠勤、遅刻、早退がなく、2年くらいフルタイム勤務を続けられている
- 社会保険に加入していて、報酬の金額と昇給などによる変動、賞与の有無、賞与額
更新の際には、主治医に就労しているという事実だけでなく、職場で受けている援助や配慮、日常生活の支障などを伝え、診断書に反映してもらうようにしましょう。
Q ガンで障害年金を受給するのは難しいですか?
A ほかの疾患と比べると、難易度は高いといえます。
理由は、初診日から1年6カ月後の障害認定日頃には、ガンの切除を終え、抗がん剤治療を経て復職し、以前の生活に近い状態に戻っていることが多いからです。
障害等級3級の目安は、「軽労働はできない等、労働に制限があって日中の半分くらい横になっている」。
障害等級2級の目安は、「一人で外出できない、日中ほとんど横になっている、仕事はできな状態」です。
この目安からも、働きながら2級と認定されることはハードルが高いことがわかります。
そのためガンの場合は、障害が出ている部位の診断書を使ったほうがいい場合あります。
例えば、抗がん剤の副作用で歩行困難であるならば「肢体の障害用」、治療の過程でうつ病を発症したのなら「精神の障害用」の診断書を用いるなどです。
そのほうが、ガンの診断書で申請するよりも、認定されやすい場合があります。
Q 障害年金の病歴・就労状況等申立書を書く際のポイントは?
A 診断書の内容を補う資料となります。唯一、請求者が自分の症状を訴えることができる書類です。
次のポイントを押さえて、作成するようにしましょう。
- 「病歴」「就労状況」「日常生活の支障」の3つを簡潔に伝える
- 発症から現在までを、時系列に期間を区切って記載する
- 傷病に直接関係のないことは書かない
- 日常生活や就労の困難さが第三者にも伝わるように、具体的に書く
- 診断書や受診状況等証明書と矛盾がないようにする
- 医学的な専門用語を使う必要はないが、診断名、治療や投薬の内容はきちんと書く
- 通院していなかった期間についての理由を書く。その期間の就労状況や日常生活についても記載する
- 読みやすいように、文字のサイズや行間に気をつける
医学書のコピーや医師の意見書、お薬手帳のコピーなどを補足資料として提出することも認められています。
病歴・就労状況等申立書は、日本年金機構のホームページからExcel書式でダウンロードできます。パソコンで記載すると修正がラクです。
Q 初診日がわからない場合はどうすればいいですか?
A まずは、これまでの病歴や治療歴を整理しましょう。
一人で思い出すだけではなく、診察券や領収書を確認したり、家族に聞いたりして、時系列に書き出してください。
そして、受診したと思われる病院へ古い順に連絡し、カルテの有無を確認します。カルテがあれば、受診状況等証明書を作成してもらいましょう。その際に、前医からの紹介状が残っていれば写しも入手してください。
1番目の病院の初診日を特定できず、受診状況等証明書を用意できない場合は、2番目以降の病院で受診状況等証明書を作成してもらいます。
そして、1番目の病院の紹介状、または障害年金の請求の5年以上前にカルテが作られていて、本人が1番目の病院の初診日を話した記録があれば、その写しを入手し添付してください。これで初診日の証明になります。
受診状況等証明書を入手できない場合は、「受診状況等証明書が添付できない申立書」を入手できない病院ごとに作成します。そして、初診日ごろの「医療従事者による第三者証明」を添付してください。初診日として認められます。
医療従事者による第三者証明を添付できない場合は、参考資料をできるだけ多く付けましょう。参考資料の場合は、審査があります。必ず初診日と認められるわけではありません。
参考資料とは、障害者手帳や障害手帳の申請時の診断書、電子カルテ等の記録、お薬手帳、病院の領収書、小中学校の成績通知表などです。
Q 障害年金の申請方法は?
A 決められた書式に記入をして、書類一式を提出します。
書類一式は、年金事務所や「街角の年金相談センター」、市区町村役場の年金課で受け取ることができます。
また、日本年金機構のホームページから、ダウンロードすることも可能です。
書類を提出する先は、年金事務所や「街角の年金相談センター」、市役所などの年金課です。日本年金機構に直接郵送することもできます。
ただし、書類に不備があった場合は受理されずに、再提出になることがあります。
Q 初診日が10年以上前だったら、どうすればいいですか?
A まずは、初診だと思われる医院に、当時の診療録(カルテ)が残っていないか確認をしてみましょう。
カルテの保存期間は、完結の日から5年と定められています。
しかし病院によっては、5年以上前のカルテを保存していることがあったり、電子化された記録に診療科と日付だけが残っている可能性もあります。
10年以上前に受診したからといって、諦めるのではなく、まずは初診だと思われる医院へ問い合わせをしましょう。
次のように聞いてみてください。
- 2012年ごろのカルテは保存されていますか?
- (保存されていないと言われた場合)倉庫などに保存されている可能性はないでしょうか?
- (カルテは残っていないと言われた場合)入院記録、通院記録簿、検査の記録などは残っていませんか?
ほかにも方法はありますが、初診と思われる医院に、まずは確認してみましょう。
Q 障害年金の申請代行を社労士に依頼する際の選び方は?
A 次の3点を確認するようにしましょう。
- 実績:あなたの障害に類似する事例で、受給に結びついた事例はあるか?
- リスク:いい話だけでなく、リスクについても、しっかり説明してくれるか?
- 費用:料金体系は明瞭か?追加料金はかからないか?
- 契約:書面できっちり締結してくれるか?トラブル時の対応は?
- 人柄:話やすいか?フィーリングはあうか?
最終的には、人柄で判断しましょう。
いくら凄腕でも、性格が合わなければ、やり取りがストレスになってしまいます。
障害年金は申請から支給開始までに、最低でも6カ月はかかります。社労士との付き合いも長丁場になります。
更新時のことも考えると、やはりフィーリングがあうかどうかは大切です。
できるだけ、直接会ってから決めるほうが、間違いのない選択ができます。
Q 糖尿病でも障害年金をもらうことはできますか?
A 糖尿病そのものというよりも、合併症が現れて、その部位が障害の状態に該当するようになって、障害年金を受給するケースが大半です。
代表的な合併症は次のとおりです。
- 糖尿病性網膜症:視力の低下
- 糖尿病性腎症:腎臓機能の低下
- 糖尿病性神経障害:肢体に潰瘍ができる
- 糖尿病性壊疽:肢体の壊疽
糖尿病という傷病名(意識障害等)で認定されることもありますが、大半は合併症による障害が原因です。
申請する際は、合併症の症状にあった診断書を使うようにしましょう。
- 糖尿病性網膜症:眼の障害用の診断書
- 糖尿病性壊疽:肢体の障害用の診断書
糖尿病の初診日は、注意が必要です。
初めて糖尿病の治療を指示された日が初診日となります。
網膜症などの合併症の症状が出てから受診した日は、初診日にはなりません。
糖尿病は時間をかけて進行していく病気です。
合併症で受診した時には、初診から10年以上経っているため、カルテがないというケースもよくあります。
糖尿病が原因で障害年金を受給しようとする場合は、初診日の証明が先決となります。
Q 障害年金を受け取っていて、住所変更になった場合は?
A 住所変更届を、障害基礎年金の受給権者は14日以内に、障害厚生年金の受給権者は10日以内に、年金事務所または「街角の年金相談センター」へ提出してください。
ただし、日本年金機構にマイナンバーが収録されている方は原則、届出は不要です。
Q 障害年金と傷病手当金を同時に両方もらうことはできますか?
A 障害基礎年金と傷病手当金は、同時に受け取ることができます。
しかし、障害厚生年金と傷病手当金の場合は、障害厚生年金が優先されます。
もし同時に受け取っていた場合は、傷病手当金を返還しなければならない場合があります。
傷病手当金を日額5,000円、障害厚生年金を日額4,000円、合計1日に9,000円をもらって場合は、受け取れる金額は、傷病手当金の日額5,000円が上限になります。
つまり、もらえる金額は障害厚生年金が日額4,000円、傷病手当金から日額1,000円の、合計5,000円です。
差額の4,000円(9,000円-5,000円)×受け取った日数分は、もらい過ぎということで、返還しなければなりません。
逆に障害厚生年金の日額のほうが、傷病手当金の日額よりも多い場合は、調整はありません。障害厚生年金のみを、そのまま受け取ることができます。
Q 障害年金と傷病手当金はどう使い分けたらいいですか?
A まずは、傷病手当金を申請しましょう。そして、療養が長期に及ぶようでしたら、傷病手当金を受給している間に、障害年金を請求する準備を進めてください。
制度としては、「傷病手当金の支給後に障害年金」と設計されています。
傷病手当金は、健康保険組合や協会けんぽの被保険者であれば、給与の約3分の2を、支給開始日から通算して1年6カ月を限度に受け取ることができます。
一方、障害年金は申請してから初回の振り込みまで、最低でも3カ月はかかります。準備期間を含めると最低6カ月はかかります。
業務外の傷病で仕事につくことができなくなった場合は、まずは傷病手当金を申請する。そして、初診日から1年6カ月が経過したらすぐに障害年金が請求できるよう、傷病手当金を受給している間に、準備を進めておくことが理想です。
Q 障害年金の金額を計算するには?
A 障害基礎年金は定額です。計算する必要はありません。一方、障害厚生年金の計算は複雑です。年金事務所や「街角の年金相談センター」に行って、計算してもらうのがいいでしょう。
国民年金の障害基礎年金は、加入期間にかかわらず定額です。等級に該当すれば、誰もが同じ金額を受給することができます。
等級 | 年金額 | 子の加算 |
1級 | 993,750円 | 子ども2人まで、1人につき228,700円 子ども2人まで、1人につき76,200円 |
2級 | 795,000円 | 同上 |
厚生年金の障害厚生年金の計算方法は、複雑です。
等級 | 年金額 | 配偶者の加算 |
1級 | 報酬比例の年金額×1.25+993,750円 | 228,700円 |
2級 | 報酬比例の年金額+795,000円 | 228,700円 |
3級 | 報酬比例の年金額 (最低保証額594,500円または596,300円) | なし |
障害手当金 | 報酬比例の年金額×2 (最低保証額1,192,600円) ※障害手当金は一時金(支給は1回だけ) | なし |
報酬比例とは、もらっていた報酬や加入月数によって変わるという意味です。報酬が高い人ほど、保険料が高くなるため、その分、年金額も多くなります。次の計算式で求めます。
- 報酬比例の年金額 = 平成15年3月以前の加入期間の金額 + 平成15年4月以後の加入期間の金額
さらに分解すると、次の式になります。
平成15年3月以前の加入期間の金額 | 平均標準報酬月額×7.125/1000×平成15年3月までの加入月数 |
平成15年4月以後の加入期間の金額 | 平均標準報酬額×5.841/1000×平成15年4月以降の加入月数 |
このように、障害厚生年金や障害手当金の計算は複雑です。
年金の支給が決定すると、年金決定通知書が送られてきます。その通知書に、加入期間や年金額が書かれていますので、ご自身で計算する必要はありません。
どうしても気になる方は、年金事務所や街角の年金相談センターに相談してみてください。
Q 障害年金を申請してから、結果が出るまでの期間は?
A 目安は、申請書を提出してから3〜4カ月です。
申請書を提出すると結果が出るまでに、障害基礎年金(国民年金)は3カ月、障害厚生年金(厚生年金)は3カ月半と案内されます。
しかし、この目安は審査がスムーズに進んだ場合です。
不備があるとして書類を差し戻されたり、追加書類の提出を求められたりすると、もっと時間がかかります。
年金事務所に提出してから1年後に結果がくる場合もあります。
3〜4カ月という審査期間は、ひとつの目安として捉えておきましょう。
Q 確定申告をすることで、障害年金をもらっていることが会社にバレることは?
A 確定申告で、会社にバレることはありません。
なぜなら、障害年金による収入は非課税です。確定申告をする必要のない収入だからです。
年末調整で申告する必要もありません。
基本的には、自分から障害年金を受け取っていることを会社に伝えない限り、バレることはありません。
確定申告とは関係ありませんが、例外的なケースもあります。
それは障害年金をもらっている最中に、同時に傷病手当金を申請する場合です。
傷病手当金の申請書に、障害年金をもらっている最中であることを記載する欄があるため、人事担当者に見られてしまいます。
どうしても会社に障害年金を受給していることを知られたくなければ、同一の傷病で傷病手当金を申請しないようにしましょう。
Q 20歳前の傷病による障害基礎年金とは、どんな制度ですか?
A 福祉的な観点から支給される国民年金の障害年金です。
20歳になる前の働き始めていない時期に、病気やケガの初診日がある場合、保険料を一度も納めていなくても、障害基礎年金を受け取れる可能性があります。
通常の障害基礎年金との主な違いは次のとおりです。
- 保険料の納付要件は問われない
- 本人の所得が370万4,001円以上になると支給が制限される
- 障害認定日は「20歳誕生日前日」か「初診日から1年6カ月」の遅いほうになる
- 海外に居住すると支給停止になる
- 刑務所等に入所したときは支給停止になる
- 生来の知的障害の場合は、初診日は「生年月日」となる
- 障害認定日の診断書の現症日は、障害認定日「前後」3カ月以内でOK